The Otolith Group

Curated by Asakusa
With support of Kawakami Laboratory, Kurashiki University of Science and the Arts

オトリスグループ

キュレーション:アサクサ
協力:倉敷科学芸術大学 川上研究室

18 FEB - 11 MAR

アサクサは、ロンドンを拠点とするアーティストコレクティヴ オトリスグループによる作品上映会を行います。大衆メディアの記録映像を歴史の証左として再検証するオトリスグループは、ドキュメンタリー素材のモンタージュと架空の物語を対置し、展覧会やキュレーション、レクチャー、映像作品またはその混合を通じて発表してきました。重厚な近代建築、地域的な抗議運動から、家族の肖像写真、子供向けアニメーション、サイエンスフィクションまで、カメラレンズに読み込まれたあらゆるイメージと集団的記憶に対する複雑なアプローチは、生政治にもとづく社会経済学や、 ポスト植民地主義の流れをくむカルチュラル・スタディーズの言説を強調し、過去と未来の重層的な錯綜を生み出しています。本展は、仮想未来から南アジアの文化的、政治的な過去を考察するオトリス三部作(I, II, III)と、東日本大震災による福島原発事故を扱った映像作品《ラディアント》(2012年、ドクメンタ13 で初演)など、グループ設立以来の代表作をまとめて紹介する日本では初めての機会となります。 1 日目: 《オトリス・タイムライン》(2003 年)は、20 世紀と21 世紀の仮想的な歴史の中で、オトリス三部作を位置づけ紹介します。三部作の序章となる《オトリスI》(2003 年)は、人類がもはや地球上で生息できず、国際宇宙ステーションに移住した22 世紀に設定されています。低重力環境に適応しバランス感覚を失った新人類の未来が描かれ、物語はオトリスグループの子孫で古人類学者 ウシャー・アデバラン・サガー博士によるナレーションを軸に進んでいきます。祖母の集めたメディア・アーカイブを通じてのみ地上の歴史を知ることができるサガー博士が、2003 年ブッシュ政権によるイラク侵攻や、冷戦構造に加わることを拒否した非同盟運動における南アジアに関連づけて20 世紀を解説しています。 2 日目:《オトリス II》(2007 年)では、スイスの建築家 ル・コルビジェが生み出した北インド・チャンディーガルの都市構想とコンクリート造りの近代建築が現れます。そしてユートピア都市からムンバイへのスラム街、繊維工場の鉄構造やエスカレーターの手すりまで、人工的に作られた幾何学的なパターンが映像に流れ込み、近代における産業化と労働の歴史が混ざり合う構図によって、ムンバイとチャンディーガルという対照的な二つの街を描き出しています。巨大なユートピア的構想のもとで進められる企業の介入と地価の高騰など、「未来のための政治」によって労働力が回 収されていくシナリオが語られ、約束された「未来」のいまが明らかにされていきます。 3 日目:現代史における過ぎ去った未来像にとりくむ三部作の最終章《オトリスIII》(2009 年)は、インド映画界の巨匠として知られるサタジット・レイ監督の未発表の脚本《ザ・エイリアン》(1967 年)に始まります。少年と異星人との交流を描くこの脚本は、インド初のSF 映画となるはずでしたが実現せず、のちにスピルバーグ監督《ET》(1982 年)の脚本ベースになったと言われています。インドではなくロンドンで撮影された本作は、空間をまたぎ制作されたオリジナル以前のリメイク作品として、主人公のイメージを構成するための諸条件を洗い出しています。

《コミュニスト・ライク・アス》(2006 年)では、ジャン=リュック・ゴダール監督の映画《中国女》(1967 年)から――哲学者でのちにアルジェリア解放組織を創設したフランシス・ジャンソンが、毛沢東主義者の女子大生と議論をする――のワンシーンが引用されています。当時、日本、中国などアジア圏内の共産主義者が情報共有のために交流したアーカイブ写真にこれらの言葉が転写され、写真と映像が対話するように織りなされています。こうしたレイヤーは、儒学思想に基づき即興演奏が展開されるコーネリアス・カーデューの《大学》(1969 年、演奏は1970 年「スクラッチ・オーケストラ」)によりさらに多層化しています。タイトルは、デリダ&ネグリの著作名(邦題《自由の新たな空間》)より。 4 日目:《ラディアント》(放射されるもの、2012 年)は、2011 年東日本大震災による福島第一原子力発電所に関する報道映像やインタビュー、チェルノブイリ原発事故の記録映像などから構成され、大災害によって開かれた歴史の裂け目に注視し、その瞬間が隔てた二つの時空間を行き来します。原子力発電所が人類に伝えた歴史的約束を呼び起こしつつ、その脅威に疲弊したいまを描く本作では、瞬く日本の都市や避難村の夜景が、死の政治学(ネクロポリティクス)を操る世界的な核施設ネットワークに捧げられた実験室として、不穏な影をひいたままに描き出されています。 オトリスグループは、政治史における軋轢のルポタージュを未来を約束するSF の視点から見つめ直し、イメージの記憶と拡散を地球規模で考察することによって、人類なき後の歴史について物語るアンソロポシーン時代の逆説的な意味を突きつけています。未来の一時性のために行き先が失われる時代にあって、ドキュメンタリー映像は、地表に現れるマクロ規模の変動を察知し、実現可能な未来を生み出すための有効な手段になり得るのでしょうか。 「オトリスグループ」上映会は、日本プロレタリア映画同盟(1929 〜1934 年、通称「プロキノ」)へのオマージュとして、現代政治史とドキュメ ンタリーの関わりを概観するアサクサスクリーニングシリーズの一環です。本展は、LUX Distribution(ロンドン)によってサポートされています。 オトリスグループは、アンジャリカ・サーガー(1968 年生まれ)とコドヴォ・エシュン(1966 年生まれ)により2002 年に設立。2010 年にター ナー賞ノミネート。ドクメンタ13 (2012 年、カッセル)、サンパウロ・ビエンナーレ(2010 年、サンパウロ)、上海ビエンナーレ(2008 年、上海)、 光州ビエンナーレ(2016 年、光州)など国際展への参加歴多数。オトリスとは身体の平衡を担う内耳の意。ロンドン在住。

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