このイベントは、AWAKE / 東京都新宿区歌舞伎町1-2-7 歌舞伎町ダイカンプラザ星座館 地下1階 (Google Map) にて開催されます。

夜の秘密が溶けるとき、Fancy Fantasy! クラブは 貴方を夢幻の欲望へお連れします

夜、光は夢のように変わり、昼間とは異なる顔を見せる。 このタイムカプセルの中で、私たちは徐々に仮面を外し、 まるで時の流れが止まったかのような光の波に身を任す。 思考は外界から内面へと向かい、人生、愛、 そして隠された秘密への思索の旅が始まる。...

夜が明けるとき、私たちだけの夜の秘密が醸し出す誘惑を きっと忘れることはないでしょう。

「Fancy Fantasy!」（ファンシーファンタジー！）は、台北を拠点に活動するアーティスト ユ・チェンタ によるミュージックビデオ制作プロジェクトであり、それを題材とした３日間限定で歌舞伎町にオープンするホストクラブです。資本と欲望がうずまく歓楽街 歌舞伎町を舞台に、変わりゆく身体とペルソナが交差するファンタジーへと来場者を招き入れ、ヘテロ中心の恋愛規範に回収されないクィア・ロマンスに祝福の光を当てます。

ネオン街にある雑居ビルの地下に、ブルーライトに照らされた水槽のような《Fancy Fantasy!》が、抗しがたい魅力を放ち脈打っています。本プロジェクトでは、アーティスト、ミュージシャン、ダンサーたちは、源氏名を通して来客に接し愛の幻想を供するプロのホストに加わり、パフォーマンスやストーリーテリングを通して彼らが望むペルソナを体現しています。協調的かつ自発的な一連の参加型介入を通して、舞台の上と観客フロアが一体となることで、「Fancy Fantasy!」はソーシャルであると同時に批評的な体験となります。そして、東京の文化コミュニティに強く結びつき、個々のジェンダーを開発する創造性と探求心を駆り立ることを目指しています。

Fancy Fantasy! クラブを取り持つのは、インフルエンサーであり歌手としての顔を持つFAMEME (ファミミ) です。本プロジェクトのアーティスト ユ・チェンタの分身である彼は、家業であるドリアン農業の振興のためにドリアン美術館を設立し、ドリアン香水の開発の乗り出す実業家でもあります。現実とフィクションの境界を曖昧にすることは、ユの活動の中心的な課題であり、そうして「構築されたリアリティー」が立ち上がります。本プロジェクトでは、この想像プロセスの具現化として架空のキャラクターを一堂に召喚しながら、PR用のモック広告や「男本」、FAMEMEブランドの派生商品など、フィクションを物質化する一連の制作が並行して行われました。

本プロジェクトのために制作されたミュージックビデオ《Fancy Fantasy!》(作曲：Yuka O. 作詞：手塚マキ 映像：片山マテウス、2024年）は、「BL(ボーイズラブ)」マンガの定型を組み合わせ、ホストクラブでの出会いから生まれる同性感の高揚を劇化する映像作品です。印象的で逆説的な歌の一節—♪ぼくは終わりの始まりを作るのが得意♪—のメロディにのせて、初めてホストクラブを訪れる若いサラリーマンがぎこちなくドアを開け、女友達の誕生日を祝うNo.1ホストに出会います。手慣れたエンターテイナーであるホストは男を温かく迎え入れ、徐々に心の鎧を脱がしていきます。シャンパン・コールは、参加者の結びつきを固くする現代の儀式となって、愛が芽生える瞬間を強く刻み込みます。そしてダンスフロアに回る照明が、目覚ましいビートと低音に合わせて揺れる二人の体に、抽象的に重なり合う光を投げかけています。

《Fancy Fantasy!》は、市場志向の疑似的な恋愛体験をクィア化の視点から解きほぐし、現実と虚像を多重露光することで、既存のカテゴリに当てはまらないエネルギーと欲望をあぶり出す複合メディアのプロジェクトです。疑似ドキュメンタリーの手法をとるユの「生活劇場」は、Fancy Fantasy! クラブをキャンプな笑いに彩り、日々の暮らしに感じるジェンダーの習慣的な制限から参加者を解き放ち、自らの欲望を開示する複雑性の場へと変容させます。幻想とその解放を交互に映し出し、多様なアイデンティティーが溶け合うクィア・ロマンスの祝祭となるFancy Fantasy! クラブ。それは、あらゆる来場者の欲望とファンタジーを包むセーフスペースとなり、あなたの変容が居合わせた集団の秘密となる忘れられない夜を供することでしょう。

ユ・チェンタ （余政達、1983年台北生まれ）

台湾出身のマルチメディア・アーティスト。一貫してアイデンティティ、言語、政治、文化的混合、メディア・インターフェースの交差を掘り下げている。気まぐれなパフォーマンスを通して、進化し続ける現代メディア領域をナビゲートし、「自己」と「アイデンティティ」の変容を検証。2017年からは、ジェンダーのパフォーマティブな側面の探求に乗り出し、個人と集団のアイデンティティに着眼するとともに、イベント型プロジェクトを通じて、メディアに支配された社会においてクィアな想像力が果たす政治的役割について考察している。また、シンガポール出身のアーティスト、ミン・ウォンと「ウォーターメロン・シスターズ」として活動するほか、FAMEMEという架空のキャラクターを創作し、デュアル・アイデンティティを基盤に、分野横断的なアート活動を精力的に展開する。

これまでに、台北ビエンナーレ、ヴェネチア・ビエンナーレ台湾館、あいちトリエンナーレ、パフォーマビエンナーレ、上海ビエンナーレ、ベルリン国際映画祭、アジアンアートビエンナーレほか、多数の国際芸術祭に参加しているほか、ポンピドゥー・センター（パリ）、シャルロッテンボー美術館（コペンハーゲン）、台北市立美術館、高雄市立美術館、京畿道美術館にて個展を開催。